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おなかのくすりシリーズ ~いわゆる”胃薬”について~

あんどう消化器内科IBDクリニックのブログです。

 

 長かった酷暑もようやく終わりが見えてきましたね。ここ最近の異常な暑さのせいか、この夏は「なんとなく胃の調子が悪い」という方が多かったような気がします(分かりやすいのでこちらで、「暑さのせいですね~」と説明しちゃっているところもなきにしもあらず😏)。
「市販の”胃薬”をのんでちょっと良くなったけど、飲まないと調子が悪くて…」とか、「近くの内科で”胃薬”を出してもらったけど良くならないんです」といったように、「胃の調子が悪ければ胃薬を飲む」というのは、なかば常識のようになっています。

 

 

 ただ、「胃薬」とひとくくりに言っても、実はいろんな種類があって、それぞれ役割が全然違います(そして薬局では有名無名、山ほどの胃薬が並んでいます…)。今回は、そんな分かっているようでよく分からない「胃薬」について、違いを整理してみたいと思います。

 

胃薬は大きく3タイプ

 胃の不調は「多すぎる胃酸により胃粘膜が傷つき、胃の動きが悪くなる」ことで引き起こされます(いつも通りかなりざっくりです)。そのため、「胃薬」はその働き方によって大きく3つのタイプに分けられます。

 

①胃酸を抑える薬

②胃の粘膜を守る薬

③胃の動きを整える薬

 

 症状によって「どのタイプの薬が合っているか」が変わってくるので、まずはこの分類を頭に入れておくと、薬局で薬を選ぶときにも、病院で処方された薬を理解するときにも役立ちます。

 

① 胃酸を抑える薬

 胃痛やムカムカ、胸やけの多くは「胃酸の出すぎ」が関係しています。この胃酸の分泌を抑えるのが、いわゆる「制酸剤」と呼ばれるグループです。

H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)

代表的な商品名:ガスター®(ファモチジン)

 胃酸を出す指令を伝える「ヒスタミンH2受容体」をブロックすることで、胃酸の分泌を抑えます。効果がでるのは早めですが、比較的マイルドに効く印象があります。市販薬としても「ガスター10®」という名前で薬局に並んでいるので、見たことがある方も多いのではないでしょうか。

プロトンポンプ阻害薬(PPI)

代表的な商品名:タケプロン®、パリエット®、ネキシウム®、オメプラール® など

 胃酸を作る最終段階の「プロトンポンプ」という部分を直接ブロックする薬で、H2ブロッカーよりも強力に胃酸の分泌を抑えます。逆流性食道炎や胃・十二指腸潰瘍の治療でよく使われ、当院でもかなり処方頻度の高い薬です。効果が出るまで数日かかることもあるのが特徴で、「飲んですぐ効かない」と感じられる方もいらっしゃいますが、根気強く続けていただくことが大切です。

 このPPIですが、最近では市販薬としても購入できるようになってきました。以前は「病院でしか出せない強い薬」というイメージでしたが、今では薬局の店頭に並ぶ時代になっています(時代の流れを感じます…)。ただし、市販のPPIは長期連用を想定した薬ではなく、あくまで一時的な症状緩和のためのものです。症状が続く場合は、自己判断で飲み続けずに医療機関を受診してください。

カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)

代表的な商品名:タケキャブ®

 PPIと同じくプロトンポンプに作用しますが、効き始めが早く、効果の個人差が少ないのが特徴です。強力な酸抑制が必要な場合(重症の逆流性食道炎など)に選択されることが多い薬です。

 

 ちなみに、これらの制酸剤は「H2ブロッカー→PPI→P-CAB」の順に、開発された時代も新しく、効果もより強力・安定的になっていくイメージです(もちろん、強ければ良いというものでもなく、症状に応じた使い分けが大事です)。

 

② 胃の粘膜を守る薬

「胃酸を抑える」のではなく、胃酸などの刺激から胃の壁そのものを守る、いわば”盾”のような役割をする薬です。

  • ムコスタ®(レバミピド):胃粘膜の血流を良くし、粘液の分泌を増やして胃を保護します。胃炎や胃潰瘍の治療でよく使われます。痛み止め(NSAIDs)を処方するときに、胃への負担を軽くする目的でセットで処方されることが多い薬でもあります(名前は思い出せないけど、「痛み止めと一緒に出されるやつ」と言われることが多い)。
  • セルベックス®(テプレノン):ムコスタと同様に粘膜保護作用があり、胃粘膜を修復する働きがあります。
  • アルサルミン®(スクラルファート):胃や十二指腸の潰瘍部分に直接くっついて保護膜を作るタイプの薬です。
  • プロマック®(ポラプレジンク):亜鉛を含む薬で、胃粘膜の修復を助けます。もともと亜鉛欠乏症の治療薬としても使われており、胃潰瘍治療のほか、味覚障害の治療で処方されることもあります。

 これらは「胃酸を止める」薬とは仕組みが異なるため、①の制酸剤と組み合わせて処方されることもよくあります。

 

③ 胃の動きを整える薬

「胃もたれ」「食後の張った感じ」「なんとなく食欲が出ない」といった症状は、胃酸の問題というより、胃の動き(蠕動運動)がうまくいっていないことが原因のことがあります。そんなときに使われるのが、消化管運動機能改善薬です。

  • ガスモチン®(モサプリド):胃の運動を促進し、胃もたれや膨満感を改善します。
  • ナウゼリン®(ドンペリドン):吐き気止めとしても使われますが、胃の運動を促す作用もあります。
  • プリンペラン®(メトクロプラミド):ナウゼリンと似た働きで、吐き気や胃の運動不良に使われます。
  • ガナトン®(イトプリド):胃の運動を促進する薬で、胃もたれや食後の膨満感、食欲不振などの症状に使われます。

 

 

市販薬(OTC)はどう違う?

 ドラッグストアに並んでいる「総合胃腸薬」の多くは、実はこれまで挙げたような成分を複数組み合わせた「合わせ技」の薬です。

 

  • 太田胃散®:制酸成分に加え、健胃生薬(消化を助ける生薬成分)を配合した昔ながらの胃腸薬。
  • パンシロン®シリーズ:制酸剤と消化酵素などを組み合わせたタイプ。
  • キャベジンコーワ®:粘膜保護成分(メチルメチオニンスルホニウムクロリド、通称ビタミンU)と消化酵素を中心とした処方。
  • セルベール®:胃粘膜保護成分と消化酵素、制酸成分を組み合わせたタイプ。
  • ガスター10®:先ほど紹介した通り、H2ブロッカー(ファモチジン)そのものの市販版。

 

 つまり市販薬は「症状に合わせて色々な成分をブレンドしたオールラウンダー」というものが多く、病院で処方される薬は「原因に狙いを定めたピンポイント」という違いがあります。

 

 診察をしていると、「よその病院でもらった薬はあまり効かなかったのに、その後薬局で買った胃薬の方がなんとなく効いた気がする」というお話を患者さんから伺います。これ、実は不思議なことではないんです。病院の薬が「①抑える」「②守る」「③動かす」のどれか一つにピンポイントで狙いを定めているのに対し、市販の総合胃腸薬は複数の成分を「合わせ技」で配合していることが多いため、原因がはっきりしない段階では、市販薬の方が症状全体に何となく効いているように感じられることがあるのです。ただしこれは裏を返せば、「どの成分が効いているのか分かりにくい」ということでもあります(良くなるなら何でもいいんですけど🤗)。市販薬で良くなったり悪くなったりを繰り返す場合は、そろそろ原因をきちんと調べてピンポイントの治療に切り替えるタイミングかもしれません。

 

番外編:「健胃薬」というジャンルもあります

 ここまで紹介した「抑える・守る・動かす」の3タイプとは少し毛色が違う薬に、「健胃薬」と呼ばれるものがあります。苦味や香りのある生薬成分(ケイヒ、ウイキョウ、ゲンチアナなど)を使い、味覚や嗅覚への刺激によって胃液の分泌や食欲を高めるタイプの薬で、大正漢方胃腸薬®、恵命我神散®、ソルマック® といった商品が代表例です。「食欲がわかない」「なんとなく胃がもたれて食べる気がしない」といった症状に使われることが多く、昔ながらの生薬の力で胃の働きそのものを底上げするようなイメージの薬です。

 

 

まとめ

「胃薬」とひとくちに言っても、

  • 胃酸を抑える薬(H2ブロッカー・PPI・P-CAB)
  • 胃を守る薬(ムコスタ、セルベックスなど)
  • 胃を動かす薬(ガスモチン、ナウゼリンなど)

と、働き方によって全く別物です。市販薬で一時的に症状が楽になることも多いですが、症状が長引く場合や繰り返す場合は、背景に胃炎や逆流性食道炎、時にはピロリ菌感染などが隠れていることもあります(ピロリ菌については以前のブログ「ピロリ菌除菌について」もぜひご覧ください)。

 

「なんとなく胃薬を飲み続けている」という方も、一度きちんと胃カメラなどで原因を調べてみると、案外すっきり解決することもあります。気になる症状がある方は、遠慮なくご相談ください。

 

 

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