IBD
Inflammatory Bowel Disease
Inflammatory Bowel Disease
Inflammatory Bowel Disease
IBDとは「炎症性腸疾患」の英語表記であるInflammatory Bowel Diseaseを略したものです。主に、「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」のことをいいます。
一般的に腸とは小腸と大腸のことを指します。
口から食べた食事を生きるためのエネルギーとするために消化、吸収を行ったり(主に小腸)、不要なものを排泄する(主に大腸)などの他に、体内で最大の免疫器官として働くなど、私たちが生きていくうえで非常に重要な臓器です。
この腸に炎症がおきる病気はすべて「炎症性腸疾患=IBD」ということになります。
ただし、食あたりやおなかのかぜと言われるウイルス性胃腸炎、抗生物質や解熱鎮痛剤などでおきる薬剤性腸炎など、原因がはっきりしており一過性に改善するような場合は、通常「IBD」とは呼びません。
「IBD」とは、① 原因がはっきりせず、② 症状の改善と悪化を繰り返すため、③ 長期にわたって治療を継続する必要がある腸の疾患のこと、をさします。
「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」の他に、「腸管ベーチェット病」や「単純性潰瘍」、「好酸球性消化管疾患(好酸球性胃腸炎など)」などがIBDに分類されます。
大腸の一番内側(粘膜層)にびらんや潰瘍が多発することで、下痢や下血、腹痛などの症状が見られる病気です。英語表記のUlcerative Colitisを略してUCと呼ばれます。20~30歳代の比較的若い方に発症することが多いですが、近年は高齢になってから発症される方も多くなっています。はっきりとした原因は不明ですが、ストレスや腸内環境の悪化などにより免疫の異常が引き起こされることで発症すると考えられています。他の疾患と同様、再燃(下痢、下血、腹痛などの症状がみられる時期)と寛解(症状が落ち着いている時期)を繰り返すため、継続的な治療が必要となります。
口から肛門まで、食事が食べて排泄されるまでに通過する臓器を消化管といいます。クローン病はすべての消化管にびらんや潰瘍が起きうる病気です。英語表記のCrohn's diseaseを略してCDと呼ばれます。病変が出現する場所によって症状は異なり、腹痛や下痢、下血(小腸や大腸)、胃痛(胃や十二指腸)、お尻の痛み(肛門)など様々な症状が見られます。全身性疾患であることを反映して、体重減少や貧血の原因を調べることでクローン病が見つかることもあります。発症年齢は10~20歳代が多く、潰瘍性大腸炎より若年者に多い傾向があります。深い潰瘍ができるため、消化管の変形や狭窄、穿孔(腸に穴が開く事)などが起こり得ます。やはり発症原因は不明ですが、なんらかの要因により免疫の異常が起きて発症している点では潰瘍性大腸炎と共通しています。
ベーチェット病とは、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍(口内炎)、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つの症状を主症状とする慢性の全身性炎症性疾患です。原因ははっきりとしていませんが、遺伝的要因に環境的要因が影響して発症すると考えられています。症状は消失と再発を繰り返しますが、必ずしもすべての症状が出現するわけではありません(口内炎はほとんどの方に出現します)。腸管ベーチェット病とはベーチェット病に見られる腸管病変で、特に回盲部(右下腹部に位置する腸)に深い潰瘍を形成し、腹痛や下血などの症状が見られます。治療はステロイドや免疫調整剤、生物学的製剤などが中心となります。
腸管ベーチェット病と類似の消化管病変を呈し、他のベーチェット病の症状が見られない場合は単純性潰瘍と呼ばれます。
食物などが原因となってアレルギー反応がおこり、好酸球というアレルギー性の炎症をおこす白血球が消化管に非常に多く集まり慢性的に炎症を起こし、消化管の正常な機能が障害される疾患です。炎症が起こる部位によって主に好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に分かれます(好酸球性胃腸炎で食道に病変が現れることもあります)。ぜんそくやアトピー性皮膚炎など、もともとアレルギー疾患をお持ちの方に発症しやすいと言われています。好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎では症状が異なっており、前者はのどの詰まりや痛み、後者は腹痛や嘔吐、下痢などが見られます。治療はステロイドや抗アレルギー薬、免疫調整剤などの他、好酸球性食道炎には制酸剤であるプロトンポンプ阻害薬などが有効なこともあります。
いずれも症状の再燃と寛解を繰り返す慢性疾患であり、長期にわたる治療が必要となります。また、同じ病気であっても病気の状態は個々で大きく異なるため、それぞれ治療薬も異なってきます。しっかりとした方針に基づいて、病態にあった、オーダーメードの治療をしていく必要があります。