おなかブログ
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前回のブログで、「潰瘍性大腸炎、クローン病の患者さんは優先接種の対象ではない」ため、「必ずしも焦って接種しなくてもよいのではないか」とお伝えしました。その上で、今回はIBD患者さんはコロナワクチンを接種するべきかどうかを考えてみたいと思います。
(少々長くなりますので、結論だけ知りたい方は一番下まで飛んじゃってください(^^;)
①ワクチンは本当に有効なのか?
②ワクチンの副作用は大丈夫か?
③ワクチンを打つことで疾患が悪化することはないのか?
④コロナウイルスに感染、発症したときにIBDは重症化するのか?
それぞれについて、順にみていきたいと思います。
①ワクチンは本当に有効なのか?
②ワクチンの副作用は大丈夫か?
①、②についてはいずれも厚生労働省の検討案に詳細が挙げられています。
(出典:N Engl J Med. 2020 Dec 10. doi: 10.1056/NEJMoa2034577)
○有効性に関する結果
(インフルエンザワクチンの有効性が60%とされている※ことと比較すると、非常に高い効果があると言えます。※平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究)
○安全性(有害事象)に関する結果
(インフルエンザワクチンにも同じような有害事象が起こります。インフルエンザワクチンの有害事象の発症率が5~10%と言われていますので、決して高い数字ではないという印象です。)
③ワクチンを打つことで疾患が悪化することはないのか?
③について、残念ながらコロナウイルスワクチン接種とIBDの悪化(再燃)についての報告はありませんが、同じ自己免疫疾患であるリウマチに関しては、日本リウマチ学会のホームページのは、以下のような記載がありました。
Q3:ワクチン投与の自己免疫疾患への影響は?A:現在接種されているワクチンは投与後に強い免疫反応が起こることが知られています。しかし、原疾患の活動性を上昇させるかどうかについてははっきりしていません。一方で2020年にヨーロッパリウマチ学会から発表されたワクチン接種に対する一般的な推奨では、高疾患活動性の患者にインフルエンザワクチンを投与した時にワクチンに対する抗体産生が低かった報告を受けて、予防接種は原疾患の活動性が安定している時に行うことが望ましいとされています。今後情報の集積が必要ですが、上記を受けて考えますと疾患活動性が安定してから接種することが望ましいと考えます。
Ann Rheum Dis. 2020 Jan;79(1):39-52.
④コロナウイルスに感染、発症したときにIBDは重症化するのか?
④については難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班が定期的にまとめている報告でも、重症化のリスクは高くないとされています(ただし、高容量のステロイドを使用している際は重症化率が高くなります)。
ただ、コロナウイルスに感染、発症した際に使用されるであろう解熱鎮痛剤や血栓溶解剤などはIBDを悪化させる可能性があります。何より、コロナに感染することにより受けるであろう強いストレスは、最も大きな悪化要因になりうると考えられます。
潰瘍性大腸炎やクローン病の方は、ワクチン接種に関して過度の心配をする必要はありません。また、焦って接種する必要もありません。ただ、コロナウイルスが発症することによる疾患の悪化は十分考えられるため、予防効果の高いワクチンを接種することはメリットが大きいと思います。最終的にはやはり「自己責任で」ということになってしまいますが、今回の記事が判断材料のひとつになれば幸いです。