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ステロイドってどうよ

 

 あんどう消化器内科IBDクリニックのブログです。

 

 オミクロン株の勢いが止まりませんね。まだ不明な点も多いようですが、従来株と比較して、非常に感染力が強いことは確実なようです。

 潰瘍性大腸炎やクローン病を代表とした炎症性腸疾患は「自己免疫性疾患」に分類されるため、使用される薬剤には、異常な免疫を抑えることで症状を改善させるお薬がよく使われます。そのため、患者さんから「今飲んでいる薬は大丈夫ですか?」という質問を時々うけます。

 

    ❓

 

 新型コロナ感染症とIBDの薬剤に関する情報は、厚労省の研究班から定期的に報告があります。薬剤に関して、非常に簡単にまとめますと、

 

  • ⼊院率はステロイドで⾼値、免疫調整剤を併用していない抗 TNFα抗体製剤、(レミケード、ヒュミラなど)抗IL 12/23抗体製剤(ステラーラ)で低値である。
  • 集中治療室管理はステロイドで⾼値、免疫調整剤を併用していない抗 TNFα抗体製剤、抗IL 12/23抗体製剤で低値である。
  • 人工呼吸器管理はステロイドで高値、免疫調整剤を併用していない抗 TNFα抗体製剤で低値である。
  • 死亡率もステロイドで⾼値、免疫調整剤を併用していない抗 TNFα抗体製剤で低値である。
  • ブデソニド(ゼンタコート)の死亡率は他の経口ステロイドと⽐較すると低値であるが、他の治療よりは⾼値である。

 

とのことです。

 

この報告から、炎症性腸疾患の治療薬で気を付けなければいけないのはステロイドのみということになります。

、、、ステロイド、すっかり悪者扱いです 😥

 


 

実際、炎症性腸疾患の患者さんも、ステロイドに対する印象はあまり良いものではないようです。

 

『ステロイドと聞いて、あなたは何を連想しますか?』

(たまたまクリニックに来られていた患者さん5,6人ぐらい調べ)

  • 「副作用が強い」
  • 「皮膚が薄くなる」(塗り薬の場合ですね)
  • 「糖尿病になる」
  • 「効き目が強い」
  • 「ドーピングで使われる」
  • 「筋肉増強剤的な・・・、」
  • 「なんか怖い」

   

  こんなイメージ?

 

 ステロイドには強力に「免疫反応」や「炎症反応」を抑える働きがあります。潰瘍性大腸炎やクローン病などの「自己免疫性疾患」では、免疫異常(本来は外敵に対して働く免疫反応が、自分の体の成分に対して働いてしまう)やそれによる炎症反応が症状の原因であり、治療するうえで、ステロイドはなくてはならない薬剤です(もちろん、副作用に注意して慎重に正しく使うことが大前提です )。

 

炎症性腸疾患で使われるステロイド剤には以下のものがあります。

 

潰瘍性大腸炎 プレドニン錠®
リンデロン坐剤®
プレドネマ注腸®
ステロネマ注腸®
レクタブル注腸フォーム®
クローン病 プレドニン錠®
ゼンタコートカプセル®

 

 このうち、プレドニン錠は非常に古くから使われており、戦後間もなくから使用されている歴史の長い薬剤です。2000年代に入ってから、炎症性腸疾患の治療は非常に発展してきましたが、現在でも軽症に対する治療でうまくいかなかったときに使われる中心の薬剤であることには変わりはありません(特に潰瘍性大腸炎において)。もし自分が、「どれか1種類だけしか薬を使ったらだめっ!」って言われたら、おそらくステロイドを選ぶと思います(そんな状況ありえないですけど 🙁 )

 

 ただ、気を付けなければいけないのは、ステロイドはあくまで症状が悪化したとき、すなわち「寛解導入」の時に使用する薬剤です。落ち着いた後、長期に使用する薬剤ではありません(寛解維持の効果はないといわれています)。

 

 一時期、『ステロイド=悪』のようなイメージが広がったため(メディアの偏向報道が原因です 😥 )、ステロイドに対して誤った印象を持たれているために、なかなか使用に踏み切れず、治療のタイミングを逃してしまうことをしばしば経験しますが、正しく使えば、間違いなく有効な治療薬です(そうでなければ70年以上も使われ続けられていないですよね)

 

 もちろん、ステロイドなど使わずに済めば一番なのですが、長い病気との付き合いの中では使わざるを得ない場面もあり得ると思います。そんな時、誤った情報やイメージのみで必要な治療法が選べなくなってしまうことがないように、今後も正しい知識をお伝えできればと思います。

 

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