おなかブログ
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あんどう消化器内科IBDクリニックのブログです。
皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
年明けから暗い話題ばかりではありますが、ここから上り調子でよい1年になってくれればと心から願っています。
どの職業でもそうだと思いますが、医療の世界でも独自の略語があります。以前のブログでも取り上げた、後発医薬品をあらわす「ゾロ」という言葉もその一つです(ブログ;「ジェネリック協奏曲」)。そんな中、医療界で使われる略語No.1(たぶん)なのが「カマグ」です。病院(地域?)によっては「カマ」と略すこともあり、実際、最初に働いていた病院では「カマ」と言っていました。これは主に便秘薬として使用される「酸化マグネシウム」を略したものです。そんな言葉を学生時代に習う訳もなく、「○○さん便秘なので”カマ”出しといて!」と言われて、「??」となっていたことを覚えています。
さて、この「酸化マグネシウム」ですが、便秘の治療薬として非常に多く処方されているお薬です。おそらく、「効き目がおだやか」「副作用が少ない」などの理由から、患者さん側からだけでなく、処方する医者側も”出しやすい”お薬だからだと思います。今回はそんな、「基本の便秘薬」とも言える、「酸化マグネシウム」についてのお話しです。
・酸化マグネシウムが便秘に効く仕組み
便秘薬は大きく、「刺激性下剤」と「非刺激性下剤」に分けられます。よく、「便秘薬は飲んでおなかが痛くなるのが怖い…」とおっしゃる方は多いですが、これは主に「刺激性下剤」によるものです。「非刺激系下剤」は「緩下剤」とも呼ばれ、酸化マグネシウムはこの「緩下剤」の代表的なお薬です(「緩やかに下す」・・・なんか優しそう)。詳しい作用機序は置いておきますが、ざっくり言うと、腸内の濃度を濃くして、腸管から腸内に水分を移動させることで便に水分を含ませて柔らかくし、便を出しやすくします。また、水分が含まれることで便自体の量が増え、それにより腸の蠕動運動を促します。「刺激性下剤」のように直接腸を刺激するわけではないので、「非・刺激性」なんですね。マグネシウムは体内でほとんど吸収されないので、長期に使っても比較的安全性が高いというのもメリットです。そのため、子供や高齢者、妊娠中や授乳中の方の便秘にも頻用されます。
・病院で処方されるマグネシウム製剤
「酸化マグネシウム」を含有した市販薬は、近所のドラッグストアや薬局で簡単に購入できます。飲みやすさに工夫を凝らした製品も多く、容量が同じであれば、基本的には病院で処方されるものと効果の差はありませんので、便秘の際は病院に受診する前にまず試してみても問題ないと思います。病院で処方されるマグネシウム製剤としては、「酸化マグネシウム」「マグミット」「ミルマグ」などがあります(厳密には「ミルマグ」は水酸化マグネシウムであり、違う製剤です。イメージとしては「酸化マグネシウムをさらに穏やかにした薬」という感じです・・・名前もなんとなく優しそう🤗)。市販薬も病院で処方される薬も、「効果の強さ≒マグネシウム容量」ですので、上限内で、ご自分に最適な量を服用してもらえればと思います。
とは言え、酸化マグネシウムはなかなか使いこなすのが難しい薬でもあります。確かに、薬の量を増やせばだいたいの方の便は柔らかくなります。が、柔らかければ出るとは限りません。むしろ、「水みたいな下痢になって出るけど、かえって残っている感じが強くなってすっきりしない・・・」とおっしゃる方もいます。大腸がまっすぐな筒であれば、液体になればなるほどきれいにスカッと出るんでしょうけど、相手(大腸)はおなかの中でぐるぐるくねくねと複雑に走行している1m以上の長い筒です。液体になればなるほど曲がり角のところでたまってしまう可能性があるというのは、何となくイメージしていただけるのではないでしょうか(便秘治療、やっぱり甘くないです…😫)?よく、便が出ずに酸化マグネシウムを増量され、ますますすっきりしなくなる方もいらっしゃいますが、そんな時はあえて薬の量を減らしてみるのも有効・・・、かもしれません。
・飲み合わせにも注意
酸化マグネシウムが上記のような効果を発揮するために、必ず必要となるものがあります。それは胃から分泌される胃液と膵臓から分泌される膵液です。ここでも詳しい理由はすっとばしますが、酸化マグネシウムは胃酸による化学反応がなければ緩下剤としての効果を発揮することができません。ということは、酸化マグネシウムと一緒に胃酸を抑える胃薬を飲まれている方は、酸化マグネシウムの効果が十分発揮できないという可能性があります。実際、厚労省の研究報告の報告状況には以下のような記載があります。
『 酸化マグネシウム(MgO)と制酸薬との相互作用を調べるため、日本でMgO単剤使用患者67例、H2受容体拮抗薬(H2RA)併用患者14例、プロトンポンプ阻害薬(PPI)併用患者27例を対象に後ろ向きに調査した結果、H2RA併用患者及びPPI併用患者はMgO単剤使用患者と比較してMgO 1日投与量が有意に多く、排便コントロール良好患者の割合が有意に低かった。 』 |
酸化マグネシウムを飲まれている方と同じぐらい、胃酸を抑える胃薬を飲まれている方も大勢いらっしゃいますが、中にはあまり必要が無いのに何となく続けている方もいらっしゃると思います。「マグミット飲んでいるのに便秘気味・・・」という方は、一緒に胃薬を飲んでいないかを確認してみるのもよい・・・、かもしれません(もちろん、自己判断で中止しないでくださいね🙏)。
酸化マグネシウムは比較的安全性も高いため、とりあえずの便秘薬として試してもよい薬です。ですが、使い方には若干のコツが要ります。「酸化マグネシウム飲んでるけど、どうもすっきりしないな~」という方は、是非お近くの消化器内科を受診してみて下さい😉
新年一発目ということで・・・
昨年、18年ぶりにニューアルバムをリリースした、イギリスのロックバンド、ザ・ローリングストーンズが1981年に発表した曲です。歌詞の内容はたわいもないのですが(失礼!)、聞くと元気がもらえる一曲です。