おなかブログ
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あんどう消化器内科IBDクリニックのブログです。
以前から下痢やおなかの張り、腹痛などで悩まれていたAさん。近くの病院にかかっても、「胃腸炎ですね」と言われ、整腸剤を出されるのみ、それほど変化もありませんでした。ご自分で調べられて、「IBSではないか」と思い、当院を受診されました・・・。
(2度目の受診)
私 | 「その後どうでしたか?」 |
Aさん | 「まだ完全ではないですけど、腹痛は少し軽くなっている気がします。」 |
私 | 「それは良かったですね!」 |
Aさん | 「IBSって治療できるんですね! 体質だと思って諦めてました。」 |
私 | 「そうなんですよ、もっと早く受診して頂いたら良かったですね。」 |
Aさん | 「いや~、なんかIBDとやらの専門クリニックって書いてあるので、それ以外の人は受診したらダメなんだと思ってました😁」 |
私 | 「・・・・、失礼しました😅」 |
「IBS=過敏性腸症候群」とは、「検査を行っても炎症や潰瘍といった器質的疾患が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛とそれに関係する便通異常が慢性的または再発性に持続する機能性消化管疾患」と定義される病気です。マスコミやSNSで取り上げられることが多いこともあり、認知度が上がってきているようです。最近はご自分で、「IBSだと思います」と言われて受診される方が多くなってきているように感じます。
IBSは消化管の運動異常、内臓知覚過敏、心理的異常の3つの要素が複雑に絡み合って生じる疾患です。ものすご~くざっくり言うと、①ストレスをはじめとした何らかの刺激が腸にかかり続ける→②腸の感覚が過敏になる→③少しの刺激で腸が異常な動きをして、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満などの症状が出る→④症状自体がストレスの原因となる→①に戻る・・・という無限ループに陥ってしまっている状態です。ややこしい病気ではありますが、治療自体は腸への刺激を軽くする、もしくは腸の異常な動きを改善することが目標になります。
ポリカルボフィルカルシウム(商品名:コロネル、ポリフル)
IBSは上記の異常により、下痢や便秘、腹痛などの症状がみられます。厄介なのは、下痢と便秘の両方がみられるタイプも多いという事です。そのため、単純な下剤や下痢止めでは解決できないことが多いのです。ポリカルボフィルカルシウムは「便の水分量をコントロールすることで、腸管内容物の通過時間を調整」します。つまり、下痢の時のは便の水分を吸収して固め、通過時間をゆっくりにし、逆に便秘の時には便に水分を含ませて、通過時間を早くするのです(これって実はすごいことなんです🙂)。処方する方からしても、便秘と下痢どちらでも有効なので、とりあえず出しても大外れしない、ある意味「優しい」お薬です(…医者にとって、ですが)。
下痢でも便秘でも、腸にとってはストレスであり、刺激です。IBSの病態が、「刺激に対する腸の過剰反応」であることを考えると、それを改善するポリカルボフィルカルシウムはかなり有効な薬剤であると言えます。安全性も高く、その働きから「食物繊維が薬になったみたいなものです」と説明されることもあります。
もちろん、この薬だけでは不十分なことも多々あります。しかし、IBSを疑ったときにまず最初に使用し、その後も基本となる薬剤であることは間違いありません。
新年度になり、新しい生活が始まった方も多いと思います。生活環境が変わり、知らず知らずのうちにストレスがたまり、おなかの調子を崩し、不自由を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。そんな時はぜひお近くの胃腸科、消化器内科などを受診されることをお勧めします。
もちろん、当院でもIBSは診てますよ😉