おなかブログ
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あんどう消化器内科IBDクリニックのブログです。
日に日に寒さも和らいで・・・と書くつもりでいましたが、むしろ日に日に暑さが増してきていますね。皆さん体調管理には十分ご注意ください。
開院して1年半ほどになりますが、最近はお知り合いやご家族からすすめられて受診される方が多くなっています(ありがとうございます 😀 )。特に多いのが、内視鏡検査が楽にできると聞いて来られる方が多いという印象です。
非常にありがたいのですが、お話を伺うと、だいたいが「こちらでは鎮静剤を使ってくれると聞いたから」というのが理由のようです。「上手と聞いたから」とおっしゃる方はそこまで多くはいらっしゃらないんですよね・・・。いいんですよ、別に。気にしてないです、ほんとに。
よく、“鎮静”と混同される言葉に“麻酔(特に全身麻酔)”という言葉があります。よく似ている言葉ではありますが、厳密にはまったく違います。麻酔は「一時的に神経機能を低下させて、痛みの感覚をはじめ知覚や意識を失わせること」と定義されます。一般的な全身麻酔では、①意識がなくなり、②痛みも感じなくなり、③呼吸も止まり、④筋肉の反応や反射もなくなることになります。そのため、手術の際は麻酔科と言われる麻酔の専門のお医者さんが安全性を厳密に管理し、いろいろな機械につながれて呼吸や循環を保つ必要があります。数分から長くても数十分の内視鏡検査でいちいち呼吸を止めていたらえらいことになりますよね 🙁
鎮静とは、「侵襲を伴う処置・検査・手術などに伴う苦痛を軽減、緩和する目的」で実施され、鎮静薬の役割は「不安を軽減し眠気を促すこと」とされます。鎮静が深い場合は確かに完全に眠ってしまい、まったく苦痛を感じないということも多いですが、その間でもいつも通り呼吸をし、侵襲に対する反応もしっかりあります。全身麻酔と比べたらはるかに安全であることがお分かりいただけると思います。
当院をはじめ、内視鏡検査で最もよく使われる鎮痛剤は「ミダゾラム」というお薬です。「ミダゾラム」のメリットとして以下の点が挙げられます。
先ほどもお話ししたように、内視鏡検査は数分から長くて数十分で終わる検査です。そのための鎮静に何十分もかかっていては、とても気楽に鎮静剤を使うことができません。実際、早い方は薬剤を入れた瞬間から眠ってしまう方もいらっしゃいます。
逆に、検査が終了した後は少しでも早く目が覚めたほうがよいです。その点でもミダゾラムは比較的覚醒のよい薬剤であるとされています。
他の薬剤ではよく見られる、一時的に血圧が低下するという副作用が出にくいというのも、安全に使用できるという点でメリットです。
「ミダゾラム」をはじめとした“ベンゾジアゼピン系”と言われる薬には、投与することでその効果を打ち消すことができる「フルマゼニル」という薬が存在します。何かあったときにすぐ鎮静効果を打ち消すことができるというのは使用する側からしても非常に安心感があります。
・・・安いっていいですよね。
胃カメラや大腸カメラは、本来は入ることがない“内視鏡”という異物が体内を通過していきます。そのため、どれほどゴッドハンドをもったスーパードクターが検査をしても、何らかの違和感や不快感が生じることは避けられません。患者さんの中には、そのほうが検査を受けている実感がわくということで、多少の違和感(この感じ方も実に人それぞれですが)であればむしろ積極的に受け入れられる方もいますが、大半の方はできれば避けたいものではないでしょうか? 実際、当院はかなり積極的に鎮静剤を使うようにしています。胃カメラや大腸カメラは1度受けたらもう受けなくてよい検査ではなく、人生で何度かは受けるべき検査です。特に、私が専門としている潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の方は、病状の評価のためにはどうしても頻回に内視鏡検査を受けていただく必要があります。そんな時、「こんなしんどい検査は2度と受けたくない!!」と思ってしまうことにより、必要な検査・治療を受ける機会を逸してしまうことがないよう、可能な限り苦痛を取り去らなければいけないと考えています。積極的な鎮静剤の使用をはじめ、どうすれば楽に検査を受けていただけるか、今後も常に考えていきたいと思います。
もちろん、鎮静をしていても丁寧な検査を心がけていますのでご安心ください 😀
・・・たぶん、そんなに下手じゃないと思うんですけどねぇ 😳