おなかブログ
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胃の調子が悪いとの訴えで受診された患者さんとの会話です。
医者:「今まで胃の検査を受けたことはありますか?」
患者:「ありますよ。」
医者:(それならそんなに詳しく説明しなくても大丈夫だな…)
「何か異常を言われたことはありますか?」
患者:「ありません。」
医者:「調子が悪いようなので改めて検査したほうがいいですね。
前は口からと鼻からと、どちらで検査しましたか?」
患者:「…? 前はなんか白いのを飲んだんですけど…。」
医者:「あ、それはバリウムの検査ですね。
胃カメラはされたことはないのですか?」
患者:「いや~、そんなに胃が悪くなったことがないので…。」
病院での胃の検査といえば、最近はほとんど胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が行われるようになりましたが、職場検診や市町村が行う住民健診などではバリウムによる胃透視(上部消化管造営検査)が今でも広く行われています。胃透視による胃がん検診の歴史は古く、1960年頃には現在行われている撮影法が確立され検診に取り入れられていました。胃透視による検診で胃がんによる死亡率が減少したという研究(とは言え、40年も前の報告ですが…)があり、国の方針として積極的に推進されたことにより、「胃の検査=バリウムを飲む」という認識が出来上がったように感じます。
ですが、20年ほど消化器内科医をさせていただいている立場からすると、検診目的にバリウム検査を受けることはまったくお勧めできません。いろいろな理由(ネットで検索すればいくらでも出てきます)がありますが、個人的には、「胃の検査を受けた気になって安心してしまう」というのが、一番の問題点な気がします。胃透視では、がんの前段階である腺腫や早期胃がん、逆流性食道炎などはまず診断できません。また、ピロリ菌の感染の有無を判断することも困難です。逆に、病気ではないもの(胃底腺ポリープなど)も異常として判定されてしまいます。決して、“胃透視で異常がなかった”=“病気がなかった”ではないのです。胃カメラであれば、これらはかなりの確率で見つけ出すことが可能です(もちろん、術者の能力による差は大きいのですが…)。
検診や人間ドックで胃透視と胃カメラを選択できる場合は、迷わず胃カメラを選ばれることをお勧めします。