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「○○の助けをちょっと借りて」 ~IBD診療におけるSDMについて~

 

あんどう消化器内科IBDクリニックのブログです。

 

 お盆の真っただ中ですが、台風直撃で巣ごもり日になってしまいました。思いがけず時間ができたので、ブログ更新です。皆様、十分にお気を付けください。

 

 

 

 私が炎症性腸疾患の治療に携わるようになって20年ほどが経ちました。患者数も増加の一途をたどり、常に注目を集めている(と思っているんですが…)疾患なので、その時代ごとに「はやり言葉」とも言えるキーワードがあります。病気に対する考え方や治療に対する取り組みなどの変遷が表れており、なかなか興味深いところがあり、そのうちこのブログでも取り上げたいと思っています(…今のところはな😎)。今回は、その中でも最近よく耳にする、「SDM」について触れてみたいと思います。

 


 

SDMとは

 SDMは ”Shared decision making” の略であり、「共有意思決定」とも訳されます。同様に慢性疾患である腎臓病では、IBDよりも早い時期からSDMが推奨されており、腎臓病SDM推進協会では、「医学的な情報や最善のエビデンスと、患者の生活背景や価値観など、医療者と患者が双方の情報を共有しながら、一緒に意志を決定していくプロセス」と定義しています。もっとかみ砕いて言うと、「お医者さんと患者さんが、治療法や患者さん自身の治療に対する思い、価値観などをともに理解し、対等な立場で一緒に治療方針を決定する」ということになります。

 

 他の選択肢に比べて、患者さんがよくなる可能性が高いことが分かっている、確実性が高い治療があるのであれば、その治療法が選択されるべきなので、通常はSDMではなく、一般的な「IC;インフォームドコンセント(「説明と同意」などと訳されます)」を行います。一方、絶対的に正しい治療法が選べないときほど、SDMが重要になってきます。ICとSDMのどちらが優れているということではなく、その時々の状況によって使い分ける必要があるということですね😃

 

中山建夫編「これから始める!シェアードディシジョンメイキング 新しい医療のコミュニケーション」

 

 

 IBD診療にはこのSDMの考え方が大事だと言われています。それは次のような ①病気の特性 ②治療の特性 ③患者さんの特性があるから です。

 

 ① 病気の特性・・・原因が不明、病態が多様、完治ができない、年齢層が幅広い

 ② 治療の特性・・・多岐にわたる治療法、治療が長期にわたる

 ③ 患者さんの特性・・・若い方が多く、様々な思いがある

 

 

 SDMには次の9つのステップがあります。ここでの”両者”とは言うまでもなく「医療者(主に主治医)」と「患者さん自身」のことを指しています。

 

ステップ1 意思決定の必要性を認識する 「おまかせ医療」ではなく両者がともに意思決定に関わる必要性を認識する
ステップ2 意思決定の過程において、両者が対等なパートナーと認識する 両者は上下・強弱なく、互いに不足を補足し、協力するパートナーであると認識する
ステップ3 可能なすべての選択肢を同等のものとして述べる 医療者は自分が良いと考える治療法だけを一方的に提示するのではなく、可能性のある治療法を幅広く提示する
ステップ4 選択肢のメリット・デメリットの情報を交換する 医療者は患者の価値観、アイデンティティに十分配慮し、一方向の情報提供を控える
ステップ5 医療者が患者の理解と期待を吟味する 医療者は患者の理解を確認し、何をどのくらい期待しているのかに配慮する
ステップ6 意向、希望を提示する 医療者は患者のもつ潜在的な希望に耳を傾ける
ステップ7 選択肢と合意に向けて話し合う 両者が合意可能な選択肢について話し合う。なかなか合意できない場合には、ステップ3,4に戻ることも考慮する
ステップ8 意思決定を共有する 両者がなぜその選択に至ったか、メリット・デメリットの可能性をどう理解したかなど、それまでの過程を振り返り共有する
ステップ9 共有した意思決定のアウトカムを評価する時期を相談する 病気の進行度、回復の程度などにより治療方針の再考が必要になることがある。一定の期間が経過したら、選択した治療の効果や負担を確認し、場合によっては新たな選択を行う

 

 

 これらのステップを踏むことで、医療者と患者さんの信頼関係が築け、治療の効果や満足度を高めることも期待できます。IBDは治療が一生涯にわたります。その間、病気の状態はもちろんのこと、患者さんご自身の病気に対する考え方、置かれている状況も変わってきます。また、治療薬の進歩や、時代ごとの治療目標の変化もあり、医療者側も治療に対する考え方が変わってくることもあります(あんまりブレブレなのもダメですけどね…😅)。その都度SDMを実践し、ただ治すだけではなく、よりよいゴールを目指していくという意識を持つことが大切です。

 

 

 

    こんな感じ…理想的ですよね

 

 

 

 

 

 

 …大切ではあるのですが、このステップを限られた時間内にできるのかと言われたら…多分無理です😵‍💫 それに、対等な立場だからと、「どうするか決めてください」と言われても、ほとんどの方が困惑するのではないでしょうか?(「ご飯なにがいい?」って聞かれて、「なんでもいい」って言われるような…ちがうか😅? (で、「なんでもいい」って言ったのに後で文句言いがち))やはり、医療者側からのある程度の誘導(リード)と助け(ヘルプ)は必要です。

 実際には、「お互いがSDMの考えや意義を十分理解したうえで、説明と同意(IC)を行う」、「一度した決定も絶対ではなく、患者さんの希望などを考慮して柔軟に対応していく」、「診察室の中に限らず、患者さんが思いを伝えやすい環境を作る」、というのが現実的ではないかと考えます。

 もちろん、SDMの考え方やその具体的な実践法は非常に有効かつ大切な考え方です。今後も、形にこだわらず良いと思ってもらえる診療をしていければと思います。

 


 

 

「ヘルプ」つながりで一曲…

 

『With A Little Help From My Friends』 (The Beatles ; 1967)

 直訳すれば、『友達の力をちょっと借りて』という感じでしょうか。もともとは1967年に発売されたビートルズの超名盤、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録された曲です。「友達の力をかりてもうちょっと頑張ってみるよ!」というメッセージをポップなメロディーに乗せて歌った、聞いていてほっこりするような一曲です。

 

 

 名曲だけに他のアーティストによるカバーも多く、特に、早くも翌68年にイギリス出身のジョー・コッカーがリリースしたバージョンは有名です(邦題:心の友)。ほぼ別の曲(!)と言っていいほど変わっており、激シブで非常にかっこいいのですが、ここではそのジョー・コッカーのバージョンをライブカバーしたBon Joviの映像を張り付けておきます(こちらのほうが分かりやすくかっこいいかと🤗)

 

 

 患者さんが何かを決めなければいけないとき、少しでも”Help”になれたら嬉しいです😊

 

 

 

 

 

 

 …ちょっと無理やりだったかもしれません😅

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