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当院の治療方針 潰瘍性大腸炎

 

 潰瘍性大腸炎はよく「大腸の粘膜にびらんや潰瘍が生じることで、下痢や下血、腹痛などを起こす原因不明の慢性炎症性疾患である」と説明されます。その他、“比較的若い世代に発症する”“近年患者さんの数が増加している”“大腸がんになりやすい”などが特徴としてあげられることが多いようです。発症要因の研究が進み、以前と比べると治療も格段に進歩していますが、こと病気の説明に関してはほとんど変化しておらず、患者さんが抱える悩みも変わっていないように感じます
 

 治療手段が増えることは喜ばしいことですが、それにより治療がより複雑化しているのも事実です。そのため、それぞれの患者さんに最適の治療法を見つけるには、治療者側の知識や経験が豊富であることはもちろんのこと、患者さん自身もご自分の病気の状態や治療法につき理解していただく必要があります

 

 そのうえで、診察時に以下のことをお伝えいただければ、最適な治療薬を考える際にとても参考になります。

 

 

① 大腸のどこが悪いのか?
  

  大腸は全長約1.5mの管状の臓器です。同じ潰瘍性大腸炎でも必ずしも大腸すべてに病変が見られるとは限りません。

 

 

 大腸は小腸から流れてきた消化物から水分を吸収して便を固める働きがあります。そのため、病気の範囲が広ければ広いほど便は柔らかく水のような便になっていきます。反対に、病変が直腸などの狭い範囲にとどまっていれば、排便回数は多くても、便自体は比較的普通便 のことが多いです(排便回数は直腸のみの状態で左右されやすい)。「今どこが悪くて症状が出ているのか?」が予想できることで必要な治療法を選択しやすくなります

 

 

② 今までどのような治療をしてきたか?

 

  潰瘍性大腸炎の治療は長期に及ぶため、過去に様々な治療を受けられている方も多いと思います。以前どのような治療を受けられて、どの薬が効いたか(または効かなかったか)という情報は、今後の治療法を考えるうえで非常に重要になります。特に、過去にステロイドを使用されたことがある方の場合、それに対する反応がどうであったかで選択する薬剤が変わってきます。

 

 

③ なぜ悪化したのか?

 

  潰瘍性大腸炎の明確な原因は不明ですが、悪化させる要因は明らかになっています。特に、ストレス、刺激物、薬剤(解熱鎮痛剤、抗生物質、経口避妊薬など)は明らかに病状を悪化させます。過去に悪化したものを覚えておくことで、再度悪化する可能性を減らすことが可能です。

 

 

 

 

潰瘍性大腸炎の治療

 

治療の基本は5-ASA(ごあさ)製剤  ~5-ASA製剤は“塗り薬”~

 潰瘍性大腸炎は免疫の異常により、炎症性細胞から放出される活性酸素やロイコトルエンという物質などが原因で起こるとされています。ペンタサ®、アサコール®、リアルダ® などの5-ASA製剤は活性酸素の除去作用やロイコトルエンの生成抑制作用などにより、潰瘍性大腸炎の諸症状を改善します。この薬剤は腸管内の濃度が高いほど効果を発揮します。そのため、各薬剤とも最も病勢が強い部位に薬剤が届くように工夫されています。基本的には口から飲むお薬ですが、肛門近くの病勢が一番強いことが多いため、注腸剤や坐剤も使われます。「腫れている個所に薬を塗りこむ」イメージです。5-ASA製剤を十分に使うことで、大半の方は落ち着いた状態(寛解)になることができます。

 

 

悪化したときはステロイド ~必要なときに最小限で~

 ステロイドはその強力な抗炎症作用・免疫抑制作用により、大腸の炎症を抑え、症状を改善します。5-ASA製剤で治療を行っていても悪化が見られた際に使用を考慮します。様々な副作用や、繰り返し使用することで効果が落ちてくるなどの問題がありますが、必要なときのみに十分な量を使用すれば非常に有効な薬です。薬剤の特性上、徐々に量を減らしながら中止をする必要がありますが、不必要に長期間使用する事は避けなければいけません

 スプレータイプのステロイド注腸剤

 

 

免疫調整剤 ~治療のkey drug~

 免疫を担当しているリンパ球の生成を抑えることで過剰な免疫反応を調整し、潰瘍性大腸炎の諸症状を改善します。ステロイドと比べると、「ゆっくり、じっくり、長く効く」イメージです。主にステロイドの減量で症状が再燃する方に使用されますが、その他、5-ASA製剤で治療していても症状が持続している方や、アレルギーで5-ASA製剤が使えない方にも使用されます。免疫調整剤にも様々な副作用がありますが、うまく使えば非常に有効かつ安全性の高い薬であると言えます。個人的には、上記の2剤に加えて、この免疫調整剤を有効に使えるかどうかが治療の鍵になると考えています。

 

 

その他の治療(生物学的製剤、血球成分除去療法など)

 近年、潰瘍性大腸炎の病態解明が飛躍的に進んでいます。それにともない、今まではなかった、病気の原因により近づいた治療薬が次々と開発されています。色々な薬があり(飲み薬、注射、点滴など)、従来の治療薬とは違った作用で病気の改善に役立ちます。いずれも非常に有効ですが、長期間の使用による安全性は不明な点が多く、その複雑な構造から非常に高価な薬剤ばかりです。あくまで基本の治療を十分行ったうえで、それぞれの患者さんに対して本当に必要かどうか(今後の生活をより良くすることに役立つか)を考えたうえで使用を決定する必要があります

 

 

 

 慢性疾患である潰瘍性大腸炎の治療は長期に及びます。そのため、適切な治療が行えるかどうかは、患者さんの生活(人生、と言ってもよいかもしれません)の質に大きな影響を与えます。本当に適した治療を皆さんと一緒に考えていければと思います。

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